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三浦佑之著『神話と歴史叙述 改訂版』
  (講談社学術文庫 2020年9月9日 ¥1.310+税)


紹介

書きのこされた「歴史」は、現実に営まれた事実としての「歴史」とイコールではない。
神から人へと直線的な時間で編まれた日本書紀と、神がみと人間の時間が併存する古事記。
天皇の婚姻系譜における父系と母系。クーデターの正統性と敗者への視点……。
過ぎ去った時間を手中におさめたい意志が歴史を編集する。
神話と歴史をともに表現行為ととらえ、古代の世界観を検討する。
ベストセラー『口語訳 古事記』を生み出すことになる、
通説への疑義と考察に満ちた一冊を大幅にアップデートして文庫化!

旧版(古代文学研究叢書1 若草書房 1998年)と改訂版(講談社学術文庫)とのあいだでは、
文章の削除・加筆などの推敲に加えて、論文の入れ替えが行われています。
とても読み応えのある本に仕上がったと思います。

試し読みが可能です(Kodansha book club)

目次

第一部 歴史叙述の方法
第一章 『日本書』から日本書紀へ:史書の構想と挫折
第二章 日本書紀の歴史叙述
第三章 古事記の歴史叙述
第四章 母系残照:古事記・日本書紀の婚姻系譜
第五章 天皇の役割:夢見と呪性

第二部 歴史としての起源神話
第一章 起源としての笑い
第二章 イケニヘ譚の発生:農耕の起源
第三章 青人草:人間の誕生と死の起源
第四章 交わる人と神:境界としての〈坂〉
第五章 起源としての生産・労働・交易

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三浦佑之著 『神話と歴史叙述』古代文学研究叢書1
  (若草書房 1998年6月30日 ¥8.000+税)



【目次】

一 歴史叙述の方法
  第一章 史書の成立
   1 法と歴史と地誌-『日本書』の構想と挫折
   2 歴史叙述の展開-『日本書紀』の方法
  第二章 方法としての古事記
   1 大国主神話の構造と語り
   2  説話累積としての倭建命説話
 第三章 古事記の系譜認識
   1 母系残照-記紀の婚姻系譜を読む
   2 中巻の技法-系譜と累積

二 物語としての歴史
 第一章 語られる人と事件
   1 語られる人々-中大兄・斉明・額田王
   2 蒲生野での出来事-二男一女の物語
   3 創られる悲劇の人-大津皇子
 第二章 語られる天皇
   1 夢に聞く人と夢に見る人
   2 聞く天皇
   3 聖帝への道-大雀から仁徳へ

三 起源神話と神々の大地
 第一章 起源としての<笑い>
   1 ゑらく神々-ヱムとワラフとの間に
   2 笑われる者たち-古代民間伝承の笑話性
 第二章 イケニヘ譚の発生-農耕と縄文と
 第三章 神々の大地
   1 青人草-人間の誕生と死の起源
   2 起源としての生産・労働
   3 境界としての<坂>

  あとがき/初出一覧/索引

【内容】

 既発表論文に手を入れてまとめた2冊目の論文集である。若草書房の「古代文学研究叢書」10冊のうちの第一巻として刊行された。とくに「歴史」と「文学」との関係にこだわって書いた論文を中心にまとめたもので、「あとがき」には次のように記している。

 古代文学を研究対象とする者にとって、起源や発生を考えることは究極的な課題の一つで、私にとってはもっとも魅力的なテーマである。
 ここではそれを、「史書」の起源として考えるとともに、「歴史」の始まりに位置づけられた起源神話の問題としても考察している。一「歴史叙述の方法」と、二「起源神話と神々の大地」とに収めた論文がそれである。
 ここにいう「歴史」とは、あくまでも表現された歴史であって、事件や出来事を事実として追究する、いわゆる歴史学でいうところの歴史ではない。「歴史」はあくまでも語られ書かれたものとしてしか存在しない、という地点に立脚した文学研究の側からの歴史論であり起源論である。起源神話と歴史叙述とを連接する表現行為としてとらえる視座は、文学研究によってこそ可能になるのだと前から考えていた。そして、ここで試みた歴史書の成立論や系譜の読み方、歴史的な背景をもった説話や始源の出来事を語る神話の分析が、歴史学の研究者にどのように受け入れられるのか、おおいに楽しみである。
 (「あとがき」より)

 残念ながら,今のところ、歴史学からの反応はない。文学研究の側は歴史を意識する度合いが強いのだが、一般的にいって、古代史の研究者は文学研究を無視する傾向があるような気がするのはひがみか。

【書評など】

 こうした専門書は読者がきわめて限定されてしまい、必然的に書評も専門雑誌に限られることになる。もっと部数が出るような値段ならと思うが、売れない本の部数を多くする出版社などあるわけがない。
 この本もひどく売れなかったらしいが、まったくと言ってよいほどに宣伝しないのだから、当然だろう。

  *真下 厚 「三浦佑之著『神話と歴史叙述』」(『国文学』 98.10)

  *居駒永幸 「三浦佑之著『神話と歴史叙述』」 (『日本文学』 99.3)

  *丸山顕徳 「神話と歴史叙述」 (『口承文藝研究』 99.3)

  *近藤信義 「三浦佑之著『神話と歴史叙述』」(『解釈と鑑賞』 99.?)

       



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